写真選評
'1967s ~ '1986s
’1968 フォートアート 5月号
「参道」 高等部 3席
●岩宮武二(写真家)

 この写真もうまいと思います。雨が降っているという。いつも私がいっている写真と天候の問題ですね。たまたま雨が降っていた時に偶然行った、そういう条件をいかにうまく使うか。これが写真を作る上に大きなわかれめではないでしょうか。この作者はそれをうまく利用して、参道をちょっと離れて、上からビジョンをつかまえているのはえらいと思います。

’1971 第5回キャノンフォトコンテスト
「肖像」 入選
安田稔「肖像」は、特別ハイキーに仕上げたことと、クローズアップの構図によって、あたかも能面のような肖像をとらえているところに心ひかれる。

応募総数 47,608枚

’1972 アサヒカメラ フレッシュ・アングル
「祈り」
 京都伏見稲荷は、しばしば写真のモチーフとしてとりあげられる。しかし、このような表現は珍しい。ここでは対象を造形的に抽象化しながら、作者自身の祈りのイメージを、きわめてシンボリックに表現されている。しかもその表現のテクニックには、なかなか巧みなものがある。きょくたんに単純かされたトーンの効果は、その空間表現を美しく整えてゆくのに大きく役だっている。また黒い空間をうまく使い、そこへ稲荷神社を思わせる鳥居やしめなわなどを明るく照らし出した構図の決め方にも、すぐれた感覚的な計算のあとがうかがわれる。 

’1972 第18回 月光フォトコンテスト
「車」 推薦
●中村正也(写真家)

 「車」(安田稔)は二枚組ですね。これなんかは比較的新しい目があるかも知れない。とくに、ここまで絵を切りつめていけるというのは、相当やってる人だなという気がします。最終段階の印画の見せ方がひじょうに優れている。一種の無気味さみたいなもの、不思議な時間とでもいいますか、白と黒のトーンの操作によって、動いているものが止まってしまった時間の不思議さみたいなものをだしているわけです。

’1972 第58号 サロン・ド・ニッコール
「樹」 2席
審査員:木村伊兵衛・三木淳・佐藤明
応募数 3,031点

 45秒露光のなかにストロボ5回発光させ現像時も特殊な処理をしていると思われるがいずれにしても雪が降っているような不思議なイメージの写真で、おそらく作者が撮影時に考えたイメージがそのとうり出た写真と思う。こういう写真は1枚だけだとパターンの美しさに終ってしまうがこの手法をもっとつきつめて自分のスタイルを完成させてほしい。

’1972 第58号 サロン・ド・ニッコール
「冬日」 2席
審査員:木村伊兵衛・三木淳・佐藤明
応募数 2,293点

 今にも雨が降り出しそうな雲がドラマチックな情感を表出しているのと、池の向うの建物という平凡な素材を、池の水面すれすれのアングルにもってきて、水面のアヒルと建物とがくっついてしまったような異様な効果を出しているのが特長の写真である。写りにくい採光条件を逆用してどんよりした雲を青っぽく描写したり、ほとんど切れ間のない雲の重なりでパースペクティブを出したりしているあたりもうまい。

’1973 第63号 サロン・ド・ニッコール
「森にて」 2席
審査員:木村伊兵衛・三木淳・稲村隆正・佐藤明
応募数 2,068点

 ちょっと欧風な雰囲気の感じられる写真である。豪華なデザインの椅子が木の下におかれ、車がそのうしろにあるという情景なのだが、森とそうした物体との組み合わせがちゃんと絵になっている。やはり作者の写真的モチーフの発見の目のたしかさであろう。画題もなかなかしゃれているし、焼きの調子がいい。

’1973 第65号 サロン・ド・ニッコール
「面」 2席
審査員:木村伊兵衛・三木淳・稲村隆正・佐藤明
応募数 2,639点

 舞踊のためのメーキャップをモチーフにしているわけだが、まるで芝居の隅取りをみるような単純化された模様の面白さがある。伸ばしのときにいろいろテクニックを使っていると思うが、まつげなんか感じよく出ているし、あごのまるみの線のあたりに影の濃淡がうっすら出ているところなどうまいものだ。

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